Q: 平成25年度の税制改正を教えて下さい
平成25年度の税制改正は、どのような内容ですか?
平成25年度の税制改正で、相続税が大きく変わります。
最大の改正は、1) 基礎控除の4割カットです。
また、2) 最高税率が引き上げられる一方で、税負担を軽減するため、3) 「小規模宅地等の特例」の条件が緩和されます。
具体的な内容は次のとおりです。
1) 基礎控除の4割カット
基礎控除の4割カットが今回の最大の改正です。相続税は、誰にでもかかるものではありません。亡くなった人の遺産が「遺産に係る基礎控除額」を超えた場合にのみ課税されます。今回、その基礎控除額が4割カットされ、相続税対象者が大幅に増加します。詳しくは別掲しています。
2) 最高税率の引き上げ
相続税の最高税率が50%から55%に引き上げられます。また税率構造が変更になります。
課税対象額 | 現行 | 改正後 | ||
1,000万円以下 | 10% | 10% | ||
3,000万円以下 | 15% | 15% | ||
5,000万円以下 | 20% | 20% | ||
1億円以下 | 30% | 30% | ||
3億円以下 | 40% | 2億円以下 | 40% | ↓変更点 |
3億円以下 | 45% | |||
3億円超 | 50% | 6億円以下 | 50% | |
6億円超 | 55% |
3) 小規模宅地等の特例の条件緩和
「小規模宅地等の特例」の条件が緩和されます。小規模宅地等の特例とは、居住用または事業用宅地等について一定の要件を満たす場合、その宅地の評価額を80%減額し、相続税を少なくするものです。
新たに次の緩和措置が導入されます。
(a) 居住用宅地の限度面積の拡大
(b) 居住用と事業用を併用する場合の限度面積の拡大
(c) 二世帯住宅の適用要件の緩和
(d) 終身利用型老人ホームに入所した場合への適用
(a) 居住用宅地の限度面積の拡大
小規模宅地等の特例にかかる居住用宅地の限度面積が240平方メートルから330平方メートルへ拡大されます。
地積(土地の面積)が400平方メートル、評価額が1億円の居住用宅地を相続したケースを例に、課税対象となる金額を計算してみます。
(現行)
1億円 – (1億円/400×240×80%) = 5,200万円
(改正後)
1億円 – (1億円/400×330×80%) = 3,400万円
このケースでは改正により、課税対象金額が1,800万円減少します。
(b) 居住用と事業用を併用する場合の限度面積の拡大
居住用と事業用を併用する場合の小規模宅地等の特例の限度面積が最大730平方メートルに拡大されます。これにより主に中小企業経営者や個人事業主の負担が緩和されます。
例えば居住用と事業用宅地等がある場合、それぞれの地積が限度面積(居住用240平方メートル、事業用400平方メートル)を超えているときは、いずれかの限度面積までしか小規模宅地等の特例の適用を受けられませんでした。それが今回の改正で、両方同時に限度面積まで適用可能となります。具体的には、両方併用することにより最大730平方メートルまで(居住用として330平方メートル、事業用として400平方メートル)適用が可能になります。
(c) 二世帯住宅の適用要件の緩和
これまで二世帯で、建物の構造上、玄関が分かれ、家の中でも行き来できない場合、子供の居住用宅地部分には小規模宅地等の特例が適用されませんでした。今回の改正で住宅の構造に関わらず特例が認められるようになります。
(d) 終身利用型老人ホームに入所した場合への適用
今回の改正で新たに、一定の要件を満たせば、終身利用型老人ホームに入所した場合にも小規模宅地等の特例が適用されるようになります。これまで老人ホームに入所した場合、今まで住んでいた居住用宅地には小規模宅地等の特例を利用できず、納税に苦労する例がありました。
今回の改正でi) 介護が必要なために入所したこと、ii) 当該住宅を貸し付けていないこと――の2要件を満たせば特例を利用できるようになります。
ほかにも、4) 未成年者控除と障害者控除の金額が引き上げられました。
控除項目 | 現行 | 改正後 |
未成年者控除 | 20歳まで年間6万円 | 20歳まで年間10万円 |
障害者控除 | 85歳まで年間6万円 | 85歳まで年間10万円 |
特別障害者控除 | 85歳まで年間12万円 | 85歳まで年間20万円 |
また5) 納税義務者の範囲が拡大し、海外に住む外国人が国内に住む被相続人から、海外の財産を取得したときにも課税されることになりました。
改正法の適用時期はそれぞれ、5)が平成25年4月1日以降、3)-(c)、3)-(d)が平成26年1月1日以降、1)、2)、3)-(a)、3-(b)、4)が平成27年1月1日以降の相続からとなっています。